ふしみのブログ

英語と旅行のノート

英会話レッスンの虚無から逃れよう (主にエンジニア・IT系向け)

英会話の練習は難しい。

私は外資企業でエンジニアとして働いている。留学経験なし、チームでは唯一の日本人なので、英語からの逃げ場はない。幸いビジネス英会話のレッスンには補助が出るので、GABAやベルリッツなどの対面英会話、Skypeを使ったDMM英会話やレアジョブ、Bizmates等の英会話教室をいろいろと試してみたのだけれど、なかなか意味のある練習をできているという実感や、続けるモチベーションが得られなかった。

そんな中で、最大限「自分の考えを自分の言葉で説明する」練習に活かす方法を見つけたので紹介してみる。それは「自分で教材を持っていく」というものだ。

この記事はふしみ Advent Calendar の12日目です。

 

なぜ英会話レッスンは続かないのか

言葉を選ばずに言えば、私が英会話レッスンを続けられなかった理由は教材がつまらないからであった。

 

…言い切ってしまったが、読んでいる人にも何かしらの心当たりがあるのではないだろうか。

実際のところ (特にエンジニアや情報系学生にとって)「英会話レッスンがつまらなく感じてしまう」理由の大きな部分を占めるのが、教材のミスマッチだと思う。多くの英会話レッスンは海外営業やコンサルタント向けに作られていて、およそぼくらが普段仕事でするような「会話」とは程遠い。

例えば私は、「あなたの会社の社名と社員数、業種を1分間で紹介しよう」みたいな課題を30分間ひたすら続けさせられてげんなりした経験がある。そもそも相手の社名も業種も知らないなんてシチュエーションは飛び込み営業か駅前で名刺を配るくらいしか思いつかない。

多少マシなシナリオでも、架空のショッピングモールの出店場所について討論したり、(正気とは思えないダサさの) 看板のデザインを比較検討したりといった謎の虚無課題を押し付けられる。そもそも日本語でもそんなことは一生する機会がないはずだ。

(手元にある教材の一例)

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同じことを学ぶにしても、リアルな題材で生きた表現を学べる、もっといい教材があるのではないか? と思って探してみたのだが、なかなか見つからない。

テキストを捨てよ、教材を探そう

そもそもなぜ架空のショッピングモールの出店場所について議論するのが空虚に感じるのか? 一つは、自分の頭の中に元々ないことを説明しなければならないからだろう。

そのような教材では往々にして「設定に入り込む」ことに頭のエネルギーを使ってしまうし、自分のようにそれがが苦手な人は「10分おきに設定もルールも異なるクソゲーを連続で遊ばされる」みたいな理不尽感を感じてしまう。 

当然のことながら、リアルな世界の中にある、自分の頭に入っているものを題材に会話する方が、意味のある会話になりやすいし、何より「会話すること」に集中しやすい。それなら、自分で題材も教材も作ってしまえばいいのではないだろうか?

 実はほとんどの対面型の英会話教室では、時間の使い方は特に定められているわけではない。

多くの教室では自分の持ち込んだ英作文を添削してもらったりもできるし、スピーチの練習にも付き合ってくれる。カリキュラム中心の Bizmatesでは難しいが、レアジョブやDMM英会話では「フリートーク」という特に教材を使わないレッスン内容の指定を事前にすることができる。

では、どのような題材を扱うのがいいだろうか? さすがに自分の仕事で扱う専門的な話題を直接扱うのは難しいが、幸いITに関連する題材は見つけやすい。 

ここではスマートフォンのアプリを使った実践的な課題のアイデアを2つ紹介しよう。英作文やスピーチ練習と違って、これらは事前準備も必要ない。どちらも自分で試してみて、自分・講師の双方が楽めて英語上達にも役立っていると実感したものだ。 

例1) アプリの操作説明をする

これはスマートフォンに入っているアプリの操作方法を説明するというものだ。最初は簡単なもの、例えば iOS標準の時計アプリなどがいいだろう。

 

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例えば右の世界時計の画面を開きながら、「新しい都市を追加するためには、右上の+ボタンを押す都市を検索する画面が開かれる」という文章を英語で正しく伝えられるだろうか?

最初は操作しながら英文を考えるのは難しい。"Tap this plus button ... Open this screen ... You can search a city." のような途切れ途切れの英文になるかもしれない。先生から表現を学んだり、必要な文法やボキャブラリーを足していきながら、自分の頭の中で "To add a city to this list, tap 'plus' button in the top right corner. You will see a list of available cities, ...." のような説明を組み立てることができるようになるのが目標だ。 

一通り終わったら、同じアプリの説明を講師の人にお願いしてみよう。フォーマルな言い方が苦手であれば、自分にない説明の仕方やボキャブラリーを吸収するために説明口調での説明をお願いするとよいだろう。公式なプレゼンでのフォーマルな説明、友達に操作を教えるときのカジュアルな説明を試してみるのもよい。 

説明に自身がなかったら、たとえば最初は分かりやすい

のようなものから始めるとよい。講師には「外国の大学を卒業して、日本の文化にもなんとなく興味がある人」が多いから、

  • 東京の乗り換え検索アプリの使い方
  • LINEで友達を追加する方法3つ
  • メルカリで商品の探し方
  • LINEマンガで無料でマンガを読むには
  • 食べログでのレストランの探し方
  • Pairsの仕組みと登録方法

のようなローカルアプリが興味を引くだろう。

アプリが尽きてきたらそれ以外も試せる。

  • ホーム画面のアプリの整理方法
  • アプリの通知の切り方
  • 日本語のフリック入力の方法

さらに「自分がこの機能を改善するならどこを変えるか」のような要素を混ぜれば、簡単な即興プレゼンの練習もできる。

この方法の利点は、「手に馴染む」道具であるがゆえに説明するのが意外と難しい概念が多いことである。「スクリーンを前にして説明する」という経験をすることができるのもよい。仕事でのコミュニケーションは、案外メールやpdf、スクリーンなどを介して説明する事が多いからだ。

さらに慣れてきたら、相手の理解度を確認しながら、分かりにくい用語について適度に説明したりもできるようになる。もしそのような語彙が自分になかったら、先生に聞いてもいいし、それをきっかけに標準教材の中にあるレッスンをやってみても良い。もしかしたら、あんなにつまらなかった教材が案外よくできていることに気付くかもしれない。

 

例2) Instagramの写真を説明する

これは少し人を選ぶかもしれないが、定型文だけではない、リアルな語彙やフレーズがたくさん得られるおすすめの課題である。特に若い世代の講師と話すと、相手も馴染みのあるツールなのでそうとう盛り上がる (経験的には女性のほうが楽しんでもらえると思う)。

よく使うSNSに合わせて、TwitterFacebookなどでも良いだろう。文章などの補足がなくてもわかる、1枚で完結した写真が扱いやすいので、Instagramがお勧めである。

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どのように説明するのかというと、「What & Why」を説明する。

まずはInstagramから1枚画像を選び、内容 (What) を説明したあと、なぜその写真をアップしているのかを説明する

  • 友達の画像なら、その人はどんな人で、なぜその人はその写真をアップロードしているのか
  • 知らない人の画像なら、そのアカウントはどんなものか / どのようにおもしろいのかを説明する

たとえばこの「天ぷらうどん」の説明をするときには、
「この人はうどんが好きすぎて、大学時代はうどん部というサークルに参加してうどんを打っていたほどだ」と説明してもよいし、
「実はこれは3千円もする高級なうどんで、彼はそれとなく自慢したいだけだと思う」でもいいし、
「彼はとても内向的なので、Instagramに上げる画像が今日食べ物くらいしかないのだ」と説明してもよい。

ちなみにどれも私がSNSで実際に観測したうどんの写真の説明である。よく意図がわからない、説明しづらい画像は、適当に "I don't know why she posted this" とか言ってスキップしてもいいだろう。

この課題のよいところは、趣味や人間関係に関する語彙も鍛えられるだけではなく、(ロジカルな説明とは異なる)「感覚的に納得の行く説明」をする訓練をすることができる。

こういう受験英語でカバーしにくい「ある行動の動機」「心理的な感覚」を説明する機会は、日常会話でもビジネスでも意外と多いし、事実やロジックを中心とした会話よりも共感を得やすく、何よりも楽しい。フィードが尽きなければネタも尽きない。

ちなみにこの課題の良くないところは、先生が教師としての役割を忘れてしまいがちなところだ。ブロークンな英語や、不正確な発音があったら指摘してもらったり、"How would you explain this picture?" と正しい文で説明してもらい新しい語彙を仕入れることを忘れないようにしよう。 

持ち込み課題のはじめ方

カリキュラムから外れることになるので、講師の人にこれから自分がやりたいことを自分で説明し、協力してもらう必要がある。前述のように、英会話教室がこういった内容のカスタマイズに協力的かどうかを確認しておくこと。

もし時間を自由に使えるようであれば、

"I'm working as a software engineer, and I want to improve presentation skill as an engineer. Let me practice by explaning features of a mobile application"

とかって言っておけば大丈夫だ。

文法や発音の誤り、内容的に分かりにくいところをちゃんと指摘してほしいときは、

"Please tell me when you find my grammar error or unclear pronunciation. Ask me any questions if you don't understand my explanation."

とちゃんと事前に申告しておこう。

講師も虚無教材に飽きている

面倒くさがられることを心配する必要はない。だいたいの英会話講師は同じ教材で繰り返しレッスンすることに飽き飽きしているのだ。

去年通っていた教室のある講師は、毎回自分のやりたい題材を持ってくるうちに「次はこれはどうかな」と提案してくれるようになった。彼も「こちらが自分の身近な題材で自分の言葉で話しているのを聞くほうが、架空のショッピングモールについて議論するよりも楽しいし、リアルな語彙を教えられる」と同意してくれた。

大金を払って虚無を学ぶのは最悪な体験だ。ちゃんと自分の言葉で話しながら英語が学べたらこの上ないね。

では!

 

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