ふしみのブログ

英語と旅行のノート

【まとめ】アイスランド・ロイガヴェーグルトレイルの歩き方

2018年8月にアイスランドのロイガヴェーグル・トレイルを歩きました。

この記事ではロイガヴェーグルがどんなトレイルなのか知らない・興味がある、もしくは「歩いてみたいけど難しそう」と考えている人や、海外旅行も山歩きは好きだけど海外トレッキングは未経験という人向けに、ロイガヴェーグルの推しポイントを自分の視点からまとめてみました。

(この記事は主に日本での登山やハイキング経験者を想定読者として書かれています)

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ロイガヴェーグルトレイルの4つの推しポイント

その1: 常に絶景。

最初の写真は出発地点から1kmほど歩いたばかりの光景です。とくに1日目に綺麗な景色を見すぎて、「このまま私たちは絶景に慣れすぎてしまい、後半になるにつれ自分の中の『絶景センサー』が反応しなくなってしまうのではないか」「日本に帰っても無感動なつまらない人間になってしまわないだろうか」と要らない心配をしたくらいでしたが、実のところ全くの杞憂で、歩けば歩くだまた違う景色が現れるほんとうにダイナミックなトレイルでした。

 

ロイガヴェーグルの中には大まかに4つの全く違う地帯があり、徐々に入れ替わっていきます。

・天然温泉の湧き出すカラフルな山岳地帯 (1日目)

・雪の白と火山灰の黒が映える、別の惑星のような高山地帯 (1日目後半〜2日目)

・一面緑に覆われた原始の地球のようなコケ世界 (2日目後半〜3日目)

・花畑の途中にときどき渡河のある渓流地帯 (4日目)

 

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私たちはひとつひとつを『ステージ』と呼んでいたのですが、途中小高い丘のてっぺんに近づくと、「次のステージ」が徐々に地平線から姿を表していく感覚が、何か経験したことがあるような気がしていました。…帰ってから、クリアできていなかったNintendo Switchの『ゼルダの伝説 Breath of the wild』を起動してみたら、かなり近い体験でした。ハイラルを歩き回るたびにロイガヴェーグルのことを思い出せて便利です。

 

その2: 高低差が少なく長い距離でも快適に歩ける。

ロイガヴェーグルトレイルは、登山ではなくあくまで長距離トレイルです。ルート中に名前のついた山の頂上を踏むことはありません。ゴツゴツした岩稜帯もなく、56kmのトレイルのうちほとんどはフカフカした火山灰質の道です。日本の高山に比べると、安全確保のための特殊な技能や道具が要求されるわけでもなく、自然の中の山歩きを楽しむことができます。

かなりの荷物を背負って運ぶことになるので、さすがに体力的な負担は大きいですが、それでもルートそのものの体力的な難易度は日本の「山登り」の対象になるような山に比べると低いと思います。

標高差でいうと、出発点のランドマンナロイガルの標高は600mほど、そこから1日かけて500m登り最高地点の1100mに達し、残りの区間で900m下りてゴールのソルスモスク (標高200m)に到着します。500mというと高尾山の標高差と同じですから、高尾山1つ分を丸1日かけて登り、2つ分を3日かけて下ることになります。もちろんテント泊装備 (通常20kgほど) があるのでそれなりの体力は必要ですが、日本の山でテント泊を経験されたことのある方には「意外といけそうだ」と思っていただけるのではないかと思います。

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コース標高図。ロイガヴェーグルウルトラマラソンのWebサイトより

 

その3: 日照時間が長いので自分のペースでゆったり歩ける

ロイガヴェーグルが標高に比べて寒冷なのは、もちろんアイスランドが北緯60度という高緯度地域にあるからなのですが、それは夏の時期の日照時間が非常に長いということも意味します。私たちが歩いた8月中旬ごろは比較的日が短くなっていましたが、それでも日没は午後9時30分頃、そして午前3時半にはすでに日が昇っていました。だいたい午後9時ごろには疲れて寝ていたので、トレッキング中は夜空を見た記憶が全くありません。

これだけ日が長いので、歩くスケジュールもかなり自由です。午後2-3時を過ぎてから歩き始めるという人もいますし、アイスランド郊外にある温泉トレイル (2時間ほど) を歩いた時は、午後7時を回ってから出発していた人がいたのには驚きました。銭湯に行くような感覚です。

登山だとどうしても日没というタイムリミットとの戦いになることが多いですが、あまり時間にとらわれず、自由に時間を過ごせるのはとても気持ちいい感覚です。

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夜9時ごろの様子

その4: 山小屋がきれいで設備も充実。トレイル全域にわたり目印があるので歩きやすい

ロイガヴェーグルはアイスランドでも最も有名なトレイルだけあって、とてもよく整備されています。

山小屋の清潔レベルも非常に高いです。布団ではなくベッドですし、定員以上の予約を受け付けないこともありちょっとしたゲストハウスくらいの快適さがあります。シャワーも4つのうち3つの山小屋にあります。そのせいか、(海外トレイルでは珍しくないようですが) 女性比率が日本アルプスよりもはるかに高く、半分まではいかないにせよ3割ほどは女性トレッカーです。

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山小屋のキッチン

水場も充実しています。ちなみにアイスランドの水は清潔なことで有名で、アイスランドは水道水が飲用できる16の国のうちの1つでもあります (トレイル中では水場の水はもちろん、小川の水をそのまま飲んでいる人が多いです)。

ちなみに、ロイガヴェーグルではメインルートの全区間に目印のポールが立っているので、道迷いの不安はほとんど感じることがありませんでした。といっても目印だらけというわけでもなく、見えている目印までたどり着くと必ずその次のポールが見えるように、ちょうどいい間隔を保ってくれています (逆にいえば次の目印が見えていない状態で、それまでの道の方向を元に歩き始めるのは危険です。ちゃんと目印を発見するか、まわりの登山者に道を聞いたりしましょう)。

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青や赤のマークがついたポールを目印に歩きます

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分岐点にはこういう案内板があります

ロイガヴェーグルの注意点

褒めてばかりなので少し悪いところを書きます。

  • 晴れることは少ない。曇りもしくは雨がほとんど。
    ロイガヴェーグルは地形的に雨が多く、日本の夏山のような快晴の景色というのはほとんど見られません。また今回は奇跡的に視界がなくなるような悪天候はありませんでしたが、そういった際には停滞を余儀なくされる場合もあると思います。
  • 食事やカメラ・携帯のバッテリーはすべて持参。
    4日間+予備の食事をすべて持参しなければならず、またバッテリーの充電も基本的にはできません (2日目の小屋はキャンプ泊でもデバイスを預けることで充電させてもらえました)。同じ期間の山行でも、いざとなれば山小屋に頼れる日本アルプス等に比べるとハードと言えるかもしれません。
  • 日本から遠い。
    今更感はありますが、日本からアイスランドへは直行便がなく、合計15時間ほどのフライトが必要です (詳しくはこちら)。私はトレイル4日間+ドライブ旅行3日間+フライトで9日間の休暇が必要でした。土日×2+5日間の有給休暇を取れば行けてしまうということなのです(!)。

 

いかかでしたでしょうか。

アイスランド旅行の写真を整理しながら「せっかくブログというメディアがあるし、早くこの体験を人に伝えられる形にまとめたい」という気持ちを抱えていたのですが、少し書き始めるたびに「こんな文章ではあの感動は伝わらない…」「ああでもないこうでもない」と逡巡してしまい結果的に半年以上時間がかかってしまいました。いっそ「ロイガヴェーグルに行くが少しでも増えるような実用的な記事を書こう」という方向性に切り替えてみることにしたら、案外すんなり書くことができてよかったです。

 

装備編・情報収集編はこちら。

rfushimi.hatenablog.jp

rfushimi.hatenablog.jp

アイスランドでドライブするとどのように最高なのかについてはこちら。

rfushimi.hatenablog.jp

2018年のもうひとつの山行 (黒部テント泊縦走) もよろしければご覧ください。

rfushimi.hatenablog.jp