ふしみのブログ

英語と旅行のノート

角幡唯介『極夜行』極限の暗闇を犬と旅する3ヶ月

探検家、角幡唯介の本。「極夜の冬の北極海を歩き、太陽を見ない数カ月を過ごした時、自分が何を思い、どのように変化するのかを知りたかった」という動機で始まる探検記。

探検家という人の考えを知るというのは初めての機会だった。どうにも胡散臭いイメージがあったが、すでに「型」の確立された有名な山に登る商業登山家などとはと異なり、探検とはなにか、GPSや飛行機のあるいま何が「探検」と呼べるのかを常に考え続け、立ち向かう価値のあるリスクを探し続ける生き方がかっこいいなと思った。

ちなみに、旅のお供として連れ歩く犬がとてもかわいい。とてもかわいいのだが、北極圏の探検家にとっては犬は非常用の食糧でもある。角幡は果たして食糧難に陥ってしまい、真剣に犬を食糧に入れた残日数をカウントしなければならない状況に至る。「犬を食べてしまう」という悪夢に魘される日々。この他にも、自分の生活から最も遠い非現実的な話でありながら生々しさのあるエピソードが多く面白い。

極夜行

極夜行

 

 

今度こそ絶対に継続できる、ToDo管理の続け方

いままで様々なToDo管理方法を試し、そして挫折してきた。Excelスプレッドシート、手帳やテキストファイルなど、主にはGTD (Getting things done) のフレームワークを使って様々なソフトを試し、ことごとく挫折してきた。

続いたのは長くて1日から1ヶ月。仕事や事務手続きなど「必ずやらなければいけないことの備忘録リスト」としては機能するのだが、それ以外の日常のタスクや勉強などを記録しようとした途端に破綻してしまうのである。

 

そんな過程を経てたどり着いた、ToDoリスト管理を成功させる1つの秘訣を教えよう。それはすなわち

「できること」しか書かない

ということである。正確には、「現在行動可能である = Actionable」、かつ「やる理由がある = 締切がある or 自分からやりたいと思っている」のどちらか以外を載せない。これだけで絶対に破綻することがなくなる。少なくとも私は、現在のToDo管理の習慣を2年以上維持している。

極端な話であれば、例えば「本当はジムに行きたくない」のに「ジムに行く」というToDo項目を作成すべきではない。できないからである

 

…それなのに人は、ToDoリストを七夕のお願いかなにかと勘違いして、「将来の自分がジムに行っていてほしい」という願望を書き込んでしまう *1。結果として、「ジムに行く」はあなたのToDoリストに「締切を過ぎた項目」として残り続ける。ToDoリストを見て「ジムに行けない自分」を後悔することに脳のリソースが僅かながらに消費され、そういう項目が増えるたびに、「できること」を探すのにかかる時間は積み重なる。

「ジムに行く」は単純化しすぎた例かもしれないが、少なくとも本を読む、勉強をする等の、意志エネルギーの必要な時間のかかる項目はToDoに作るべきではないだろう。

未来のことは書かない

もうひとつの典型的な「できないこと」の例は「未来のこと」である。ToDoリストは「未来の自分がやることリスト」であるが、「今できないこと」を書くべきではない。返事待ちだったり、ある日付以降でないと遂行できないタスクは、カレンダーに入れるか別のフォルダにまとめるのがいい。メールの返信系は、メールアプリで管理するのが(返信・未返信の Tracking が煩雑になりすぎる)。

逆に、「すぐにできる」ことなら積極的に、今すぐできる細かいことでも書くべきである。自分は、すぐにできるけれど後でもいいこと、「LINEを返す」「facebookのメッセージを見る」「朝見つけたブログの続きをよむ」くらいの項目も入力してしまう。いったん書いてしまえば、忘れられるし、それを始めてしまって集中が途切れることもない。

「できないこと」はガンガン消そう

大切なのは「できないこと」をToDoリストに書かず、「できなくなってしまったこと」を1つでもToDoリストに残さないことである。「できないこと」は消してしまうべきだ。「できるチャンス」があったのに達成されていない項目は、それは本当は「いまはできないこと」だということにしよう。例えば3日ジムに行けるチャンスがあったのに行かなかったときは消しておこう。

それでもやらなければならないことはある。「論文のサーベイ」「引越し業者の見積もり」など、3回チャンスを逃したがやる必要のある、すなわち取り掛かるのにどうしても意志のエネルギーが必要なタスクを見つけたら、できるかぎり事前にタスクを具体化して、未来の自分のためにしんどいパートをこなしておいてあげよう。「Google Scholarでキーワード○○を探す」に書き換えたり、引越し業者の電話番号を調べてワンタップで電話できるようにしておくとか。そうして書き換えた項目については、少しだけ「延命」してもよいことにしよう。

もし消してしまうのが惜しければ、上司の居ない日や、予定のない週末に見返すための「いつかやる」フォルダに入れるといい。そしてそこにある項目を達成できたら、自分をたくさん褒めてあげるといい。

何が起こるか: ToDoリストを見るのが楽しくなる

こうして意識して「できること」だけが並んでいるリストを作るとどうなるか。ToDoリストを見ると、行動可能なことが並んでいる。優先順位順にこなしていってもいいし、締切順にやってもいい。自分のやりたいことだけやってもいい。おめでとう! あなたはやっと真のToDoリストを手に入れた...。

とはいえ、できないことを消したり、できることに変換をし続ける実践はそれなりに難しい。実のところ、ものごとを遂行していく難しさは結局「できないことを消す」ことの難しさに帰着することに気づくだろう。それでも、ものごとに取り掛かれず無駄にする時間はぐっと減るはずだし、そのぶんこの「本質的な」難しさにかけられる意志のちからを残しておくことができる。

 

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おそらく「できることしか書かない」を徹底するための実践は、結局のところ書籍「Getting things done」で行われていることにかなり近くなってしまうかもしれない。

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GTDフローチャートhttps://www.kikakulabo.com/gtd/ より引用

ただこのフローチャート自体が我々トリアタマにとってはかなり複雑なので、まずは「できることだけを列挙したリスト」を作ってしまうことから始めるのがいいと思う。だがもしもGTDという実践のフレームワークそのもの興味が湧いたら、数年前に改訂されたこの書籍がお勧めだ。

全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

全面改訂版 はじめてのGTD ストレスフリーの整理術

 

MaciOSのみの対応だが、Things 3というGTDの実践に特化したアプリはよくできていて、触っていて楽しい (続けるのに意外と大切な要素だ)。

The all-new Things. Your to-do list for Mac & iOS

 

*1:みんながみんなそんなにアホではないかもしれない。だがこれはまさしく自分が繰り返してきたことなのだ

would のこころ

英語を使って仕事をするようになって1年半が経った。よく「学校で習う英文法なんて役に立たない」という本を読んだりするけど、結局の所さすがに1年半も英語だけで暮らしていると、特殊な倒置表現など以外のほぼすべての英文法は実戦で出会うことになるし、それらを使わないとうまく表現できないシチュエーションにも遭遇する。受験英語をバカにする人も多いが、必要不可欠な文法項目を過不足なく網羅できているという意味では日本のカリキュラムはよくできているのだ。

 

しかし、受験英語であまり登場しなかったのに、実生活では大活躍する文法というのはいくつかある。その中の最重要と言っていいのが、助動詞 "would" の用法である。 would は実は助動詞の中でかなり日本語らしい、柔らかい響きを生んでくれる単語なので、覚えておくと日本語で思い浮かんだ伝えたいことをよりダイレクトに翻訳できるようになるし、仕事でも「こいつはニュアンスをちゃんと伝えられるやつだ」と信頼を置いてもらいやすくなる。

 

では、実際の would の使われ方にはどういうものがあるのだろうか。譲歩、謙遜、丁寧な勧誘、などという用法の分類が並んでいるけど、とりあえず would の「こころ」はこれである。

would = 仮定法「もし〜だったら」の省略、特に「もしあなたの立場だったら (if I were you, )」の省略

説明の前に1つ例を挙げよう。日本で英語を話すときには、「教える」「教わる」というシチュエーションは避けて通れない。東京観光のプランにアドバイスをしたり、仕事のメンタリングをしてもらったり、そういうときに「こうすべきだと思う」と伝えたいシチュエーションは多い。

例えば東京に詳しいあなたが、アジアに初めて来る友達にアドバイスする、というような知識に差があるシチュエーションだと、つい直訳して "I think you should -" と言ってしまいがちだが、実はこの表現はかなり押し付けがましく感じられてしまう。

I think you should skip Tokyo tower. You should visit new museums instead.

あなたは東京タワーに行ったことがあるので、「東京タワーの施設は古くてガッカリするかもしれないし、展望台も大して高くないから、近くの美術館の方がオススメだよ。」と言いたいのかもしれないけど、「You should」という表現は、「その友人はタワー建築に興味があるかもしれない」などの可能性を考えていないことを表してしまい、大げさに言えば「どうせ目立つ建物だから東京タワーを選んだんだろうけど」というニュアンスになってしまいかねない。特に北米圏では、こういった相手の価値観や判断に立ち入った表現というのは明確に「失礼」だと学校で教わるらしい。

 

こういうとき、英語ではよく「私」を主語にした表現をする。

I would skip visiting Tokyo tower. (if I were you / if I were in your position)

(私なら) 東京タワーはやめておくかな。

"I would" と言ったときには、だいたいこのカッコ内が省略されていると思ったほうがいい。あなたの上司が "I would not do in that way" と言っていたら、「好みって人それぞれなんだなあ」と考えるべきではない。「俺ならそうはしない」すなわち平たく言えば「そのやり方は間違っている」と言っているのである。 このことを知らないと大変な目に遭うことがある...。こわいこわい。

 

would はおすすめする時にも使える。recommend, suggest などの動詞の場合だと (あなたが私なら) の省略と考えるのは不自然だけど、この場合は (もしも私があなたにお勧めできる立場であれば) の省略、というニュアンスで考えたほうがいいかもしれない。

I would recommend museums nearby instead.

(私があなたにおすすめするとしたら) 近くの美術館をおすすめします。

 上司から意見を聞かれた時などにもシチュエーションにもよく使う。

I would choose the second idea.

(私などはアイデアを選ぶ立場ではないのは承知の上ですが、もし私が選ぶ立場にあるとしたら) 2番目のアイデアを選びます。

文法書にこれらの would は「控えめな意志」「丁寧な勧誘」などと説明されているが、これらはすべて「もし〜なら、〜した」という形で説明できる。すなわち助動詞 would の「こころ」は仮定法なのだ。*1 *2

would は丁寧なニュアンスだけではなく、嫌味や皮肉などネガティブな表現にも使われます。日本語の謙譲語と同じですね。

A human would not curse old lady like him.

人間ならば彼のように高齢の女性を罵ったりしないでしょう (=アイツはマジ人間じゃねー)

上司にありえない失礼な指摘をした後輩を愚痴るときなどにも。

Would you say that? I wouldn't.

あなたがその後輩の立場ならそれを言いますか? 私なら言いません。(普通それ言う? 黙っとくよね)

それでは、みなさんも would を使って仮定法ハッピーライフを!

 

 

*1: Would といえば "I would like to", "would you like" が先に出てくる人も多いかもしれないが、実はこれらの用法は、メインの用法から派生した慣用表現として掲載されている

*2: could もそうであるが、体感ではwouldのほうがはるかによく使われると思う

ここ3年くらいを振り返る

2018年のとりあえず目標は低く、毎日140字以上の記事を公開することにする。とりあえず手始めに、ここ3年間くらいで取り組んだことなど近況を振り返ってみることにした。

2018

今の会社も2年目になり。半年間ほどの大きなプロジェクトを担当したり、初めてインターンをホストしたりとだんだんと仕事にも慣れてきた。同僚と旅行に行ったり、外国籍エンジニア女子たちのために英語で合コンを開催したりした。前半は先輩2人が退職+1人が移籍でまさかのチームに2人という事態になったものの、秋には新しいマネージャ、さらに2人新卒の後輩もチームに加わり、なんとかチームらしい形を取り戻した。チームや組織図上での変化は大きい年だったが、マネージャの「変化は大きいけど、毎日やることは変わらないはずだから安心して」という言葉通り、日々の仕事には意外と大した影響のないことには驚いた。

行ったところ:

1週間の旅行を2回もしたせいで9月には有給をほぼ使い果たしてしまった。謎に台湾に2度行っている。アイスランドのロイガヴェーグルトレイル完歩がいろいろな意味で人生の中でも指折りの印象に残る体験だったので、別の日にブログに書く。

登山は大菩薩嶺筑波山、涸沢のほか、先に述べたロイガヴェーグルベイエリアのPoint Reyesも歩いた。

2017

修論を提出して、4月に会社に入社した。ラボで作った『電気刺激で誰でもビブラートの効いた美声を出せるデバイス』というネタをなぜかテレ朝のディレクターに拾っていただいて、テレビに出演するなどした。3月に学会で、5月に入社研修でベイエリアに行く機会を得た。2015年の制作展で作った『ある声について』から、2年間「声」をテーマに色んな角度から何かを作り続けられたのは、飽きっぽく軸が見えづらかった自分をなにか変えられたようでよかった。

6月には4年近く暮らした根津を離れ、会社に近い中目黒に引っ越した。中目黒に住むとという選択は「中目黒代」を払っいるような気がしてしまい避けようとしていたのだけど結局便利さに負けてしまった。結局住環境もよくご飯も美味しいので大変気に入っている。意外とキラキラはしていない。

夏は前年にやったプロジェクトを発展させて金沢の21世紀美術館で展示させていただく機会をいただいたので、9月までは展示準備・設営で忙しかった。そんなこんなで意外と仕事以外のプロジェクトの多い1年だったので、どうやって今の職場環境に馴染んでいったかなどはあまり覚えていない。なんとかなった。

行ったところ:

2016

博報堂でPechatの開発をした。1月に企画書を見せられ「SXSWでデバイスを展示したい」というので来年の3月かと思いきや2ヶ月後、、というスピード感のあるオリエンを受けた。プロトタイプアプリの制作と、製品版への技術的アドバイスや音声変換ライブラリの開発、TTSエンジンの組み込みなどが主な仕事だった。信号処理 (ピッチ・スピード変調や基本周波数検出)、CoreAudioプラグイン開発などが主な技術的な難しさだった。修論でちょうど自己音声知覚に関する研究に取り組み始めたところだったので、仕事で学んだことを修論に活かすことができて助かった。

行ったところ